全感覚祭17

肌寒くなってきて、まだ夏だろーなんて顔しながら、がっつり長袖きてる。まあ許してくれよな。寒がりなんだ。

金木犀が香り出す頃、そわそわと始まる祭の準備。太鼓の音こそ聞こえないけど、胸の高鳴りが奥の方でなり始める。今年はいつもにもまして準備した。だいたい毎回、信じられないくらいトラブルがある。冗談抜きで、次回開催だって即答できない。それくらいポンコツなただのバイブスの塊はいつだってギリギリの琴線の上を転がっている。

忘れもしない。

出演できるかもわからない上に、メンバーとの関係も最悪な中で半ば意地で開催した2016年、前回。残された勘だけで放った多摩三角公園の数時間は、一部を除いた不特定多数の心ない言葉で砕け散った。

皆で銭湯に行って会議したけど何も話せなかったことも、バンド練で一音も出せずにただツイッターのタイムラインに目を持っていかれて黙り込んだあのスタジオの重い時間もきっと忘れることはないだろう。ロスカルと鳴らした最初のステージすら否定しかけていたオレにcar10の新しい曲が届いた。

「この思い出がいつかさ、誰かのせいによって、汚されることなんてあるわけないはずさ」

今年、car10はメンバーの都合で出れないんだけど、あの曲をライブで聞いたその日、オレの内側で確かに全感覚祭は始まっていて、それが数ヶ月早めに終わっただけ、出演済みです。お疲れ様でした。

まあそんなこんなで準備は頑張った。頑張ったぜ。原点回帰も兼ねて、大阪。

散々コンセプトは話しきたし、カンパが必要なのは中学生でもわかるはずだ。こんなのチャージ五千円取るメンツだぜ。まあ、そこは皆も告知してるし、全面的に信用するとしてはバッ—-とはしょるけど、オレたちにとってはずっと特別な街だ、大阪。あの場所でたくさんのことを教わった。

午前3時、鏡の前で歯を磨く。

あの日の俺が自分に問いかけてくる。失ったものや手にしたこと、調子はどうだよ?久しぶりに見るそいつは相変わらずクソ生意気な顔で、自分の二つの目をギラギラと睨んでくる。

悪いが、お前に恥なきゃいけないことなんか何一つないね。お前はどうせ、いっぱいになった堺のフロアの一番後ろ端で腕を組んでつまらなそうにみているんだろ?なんていったって大阪。お前の住んでる街なのだから。

悪いがお前に振るための尻尾は東名高速道路のパーキングエリアの便所に痰と一緒に捨ててきた。もう4年以上も前の話さ。

あの頃フロアで見てた奴らはどうしてるかな?細い目を合わすこともなく、体も揺らさずに暗がりに隠れていたお前は、今どうしてる?新しい暗がりを見つけたか?もう、こんなブログ見てやしないか。

あの頃、遊んでたバンドマン達は?いや、遊んでたなんてもんじゃなかったな。殺し合い。どっちがでかい音出して激しく弦を叩けるか、喉がちぎれるくらいでかい声で叫べるか、今思えばそれ自体は音楽じゃなかったかもしれないけど、全て間違ってなかった。あの時信じてたものだったんだから。

ステージから降りた奴は何かを諦めた奴なのか?諦めることを選ばされた奴?何かに負けたのかな?わからない。できるだけその時間を忘れたくない、けど、ただ、お前らの分まで背負って歌うよ、なんて胸くそ悪いこというつもりはない。お前の悲しみも寂しさもお前のものだし、仮に俺が消えた後、あいつの悲しみを代弁するなんてお節介なヤツがいたら頼むからステージから蹴り落として唾を吐きかけてくれ。

いや、思い出話しがしたいわけじゃないんだ。振り返るには早すぎる。映画で言えば今はわずか冒頭の15分。そう、ずっと歌ってること。

いつかは俺たちの旅も終わる。どうやらみんな知ってることらしいんだけど、人間は死ぬらしいし。そんなバカなーって思うけどマジらしいんだ。驚かせた人がいたらすまないね。じゃあいつかは俺たちも負けるのか?しらねー。バっカじゃないの。

ただ、とりあえず今、音が出せる。メンバーがいて、時間が許されてる。33組全時間、1分1秒これは当たり前のことなんかじゃない。いつかこの日々のことをお前は「あの頃は良かった」と呼ぶ。奇跡なんかとっくに起きてる。音楽家達はいつかこの音といれた時間達のことをかけがえのない日々のことを奇跡だったと知る。スタジオに一人、錆びた弦の張られたギターを見て、お前は思うんだ。

俺たちが共有するのはそういう時間達だ。言い訳もハリボテの常識もいらない。鏡の前の髪の長いお前も、伏せ目がちな昔客だったお前も、同じ時代を走った同志もどうかもう一度集まってくれよ。

俺は何一つ諦めてなんかいないし、恥ずかしいことも何一つ言ってない。押し花がもう一度花になった時、その時は迷うことなく、全ての景色を駆け抜ける金色の龍になれ。

マヒト

PS   明日ちょー晴れるといいな〜。