924gilman street

幽霊はいる。
いないわけがない。特別霊感と呼ばれるものが強いわけじゃないけど、その存在はたしかに感じる。
物に想いというものが残るなら、その物から溢れた情感が何か心に作用する時、説明不能のそれは霊とよばれるものと限りなく近い。
幽霊と呼ぶか否かその程度の差こそあれど、説明不能の磁場というものはたしかに存在する。
お墓なんかで幽霊を見るのはそういうことだろう。そこにいるかいないかではなく、手を合わせ祈りにくる人の念がその場所に作用する。場所が力をもつ。力をもった場所は時に見えないものを見せることがある。

Bukleyの924Gilman streetはまさにそんな場所だった。
FUGAZIやoperation ivy、MDC、GREENDAYにRANCID、fifteen、YOUTH OF TODAY、DESCENDENTS、数多くのバンドがそのステージの上で吠え、かきならしてきた場所には正体不明の空気がたしかにあった。

入り口にまず記された看板にある
NOの応酬。
ここはNO ALCHOL、NO DRUG、NO VIOLENCE、
そのおかげもあってALL AGEが遊びに来ることができるパンクの良心とも呼べる箱だ。中に入るとバスケリングとボールが転がっててバンドの転換なんかでは適当にガキんちょがひどいドリブルのつき方をしながら遊んでる。
モッシュの仕方も規定があり、wall of DEATHを禁止してる。
遊び古された床、壁は落書きの書かれてないところがない。トイレの入り口には仕切りがなく、匂いは漏れるし、全体的に汚くてしっかりとパンクのマナーにそっている。
壁に書かれた名前を見てるだけもうなんていうか、泣きそうになってくるな。もちろん個人的なバイアスはばっちばちにかかっているけれど。

ライブは楽しかった。
ギルマンのスタッフのほとんどがシャツを買ってくれたし、PAは仕事をほったらかしてモッシュピットに入り、店長からは過去のレジェンドの名前を出しながら褒められた。
たいして客がいたわけじゃないし、オレが見てきた伝説のパンパンのフロアの伝説のライブには程遠いけど、ちゃんと存在してた。動画もKK mangaのハマジに頼まれたし、なんらかあげようかと思うよ。
いつか、この場所でBUG ME TENDERとかやるからさ、その時は来てくれよな。

ライブハウスは墓場だ。夢をみて、そのほとんどのバンドの夢は散っていく。
いい加減な奴が多いからすぐに解散もするし、生活的に崩れたり、適当な理由で死んだりもする。
この箱の入り口を入って左の部屋にはここに所縁のある有名無名を問わず様々なパンクスへのRIPの言葉が綴られた壁がある。
使っていたドラムスティック、ブーツにピック、壁にはその人への気持ちが個人の言葉として綴られている。
何も起きないわけがないだろう。そんな場所で。幽霊ではないかもしれない。ただ正体不明のそれに代わる何かは、確実にその磁場に絡みつき、この壁を、フロアを、ステージに立つオレにたしかに響いたんだ。

 

オレのパンクの友達には皆この場所きてほしい。何か店や場所を持ちたい人にも見てほしい。
パンクの正体は反抗でもなんでもなく、どうしようもない愛だ。そのことをこの場所は全霊で発している。
場所は育つ、思いは一瞬で消えるようでいて本当は消えていない。大切な時間が胸の裏側で咲き続けるように、その場所はちゃんと記憶していく。
だからまた次の夜へと旅に出られるんだ。
少しキザか?それくらい許してくれよな。オレは今気分がよくて、うれしいんだ。

 


マヒトゥ・ザ・ピーポー

2009年 バンドGEZANを大阪にて結成。作詞作曲をおこないボーカルとして音楽活動開始。
2011年沈黙の次に美しい日々をリリース。全国流通前にして「ele-king」誌などをはじめ各所で
ソロアーティストとしてインタビューが掲載されるなど注目が集まる。
2014年、kitiより2ndアルバムPOPCOCOON発売。
2014年には青葉市子とのユニットNUUAMMを結成し、アルバムを発売する。
2015年にはpeepowという別名義でラップアルバム Delete CIPYをK-BOMBらと共に制作、
BLACK SMOKER recordsにてリリース。
また音楽以外の分野では国内外のアーティストを自身のレーベル、十三月の甲虫でリリースしたり、
野外フェスである全感覚祭やZINE展を主催したりとボーダーをまたぎ自由なスタンスで活動している。

GEZAN 公式サイト 

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